に投稿

様々な要因から低下する恐れがある住宅の耐震性

最終更新日 2024年5月14日

◯阪神・淡路大震災以降改定された耐震基準

住まいの耐震性が問題視される場合、主に木造住宅に関する様々なリスクが取り沙汰されます。建築物の耐震基準は建築基準法に基づいて定められていますが、1978年(昭和53年)の宮城県沖地震や1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災を経て改正がなされ、現行では震度6強から震度7クラスの大きな揺れに見舞われても倒壊する恐れがない建築物にすることが定められるようになりました。

2016年(平成28年)に発生した熊本地震では古い基準で建てられた住宅に比べて新たな基準が定められたのちに建てられたものは倒壊するケースが少なかったことから、新たな基準が大地震に対しても有効性が高いことが立証された形となりました。

古い基準の際に建てられた木造家屋でも、適正な診断を受けて補強工事を行うことによって倒壊のリスクを低下させることが可能とされていますが、遠からぬ将来に大規模地震が起こると予想されているエリアにおいても、目に見えて進んでいないのが現状です。

自治体によって耐震診断にかかる費用を補助する制度や、診断によって認定された建物を改修するための工事費用の補助が受けられる制度も設けられていますが、いつ来るかわからない地震のためにまとまった費用をかけることにためらいを覚える人は少なくありません。

◯古い木造家屋のリスク

古い木造家屋の場合、旧来の耐震基準で建てられているというリスクのほか、雨漏りなどによって柱や壁などに使われている木材が腐食して強度が低下する恐れがあります。

雨水などによって湿り気を帯びた柱などには木材腐朽菌と呼ばれる、木材を腐食させる原因菌が発生し繁殖を始めます。木材腐朽菌は柱や土台を腐らせることで建物の強度を低下させるほか、木材腐朽菌が発生した木を好んで食べるシロアリが侵入しやすくなってしまい、シロアリの食害によっても建材が浸食されて強度低下を招くリスクが高まってしまいます。

多くの木造家屋が倒壊しその後発生した火災によって命を落とした人が多かった阪神・淡路大震災以後に国土交通省の研究機関などが行った調査では、倒壊した家屋のほとんどが柱や土台などが腐食したりシロアリの食害によって著しく強度が低下していた建物だったことが明らかにされ、古い木造家屋ならではの危険性が改めて注目されるようになりました。

シロアリが好んで食べるのは1階の柱と土台の継ぎ目にあたる部分とされ、建物の強度を左右する最も重要な土台が崩壊しやすくなることで、建物全体の耐震性が著しく低下してしまうことが指摘されています。

阪神・淡路大震災では倒壊した家屋のうち約9割の建物が木材が腐朽しシロアリ被害が進んでいたとされ、シロアリ被害がなかった家では倒壊を免れたり、少ない被害に留めることができたことも明らかになりました。

シロアリが好む木材腐朽菌の発生を誘引するのは雨水などの湿り気ということで、雨漏りが発生している場合は速やかな修理が必要となりますが、大掛かりな屋根の補修が必要な場合相当の出費となるため、雨漏りするのは大雨の時のみと考えて、現状維持のままやり過ごしている人も少なくないと考えられています。

◯住宅の耐震補強の際の注意点

日本に生息し家屋に被害をもたらす在来種のヤマトシロアリとイエシロアリが特に湿り気のある木材を好むため、雨漏りが原因で木材腐朽菌が発生しやすい古い木造家屋が狙われやすいと考えられていますが、近年では新築住宅においてもシロアリ被害によって強度低下を招くリスクが指摘されています。

シロアリは木材ばかりを食べるというイメージがありますが、雑食性のため植物由来のダンボールや洋服などの繊維類、ゴム製品などのほかプラスチックや発泡スチロールといった化学物質も食い荒らす生き物です。

近年特に問題視されているのが断熱材に使われている発泡ウレタンへの食害で、エネルギー効率が高く住み心地が良い高気密・高断熱の新築住宅ほどシロアリに狙われやすいというデメリットが注目されるようになっています。

これまで特に問題視されていたのは巨大なコロニーをつくるイエシロアリ被害が多い九州エリアでの被害でしたが、地球温暖化が進むにつれて本州でも被害が目立つようになりました。

北海道など寒冷地にも生息し日本のほぼ全域で被害をもたらしているヤマトシロアリや、乾燥した木材を好む外来種のアメリカカンザイシロアリなど、住宅の新旧にかかわらず対策が重視されています。

近年では豪雨災害も日本全国で発生しており、目に見えた被害がなくてもささいな雨漏りからシロアリを誘引したり、見えない場所で土台の腐食が進むなど、大規模地震による家屋倒壊のリスクを高める要因がこれまで以上に増えてきた面があります。

住宅の耐震補強を考える際には、建物そのものの強度だけではなく地域のシロアリ発生状況や豪雨に見舞われやすいエリアかどうかなど、様々な側面に注目して対策を立てるべき時代になったと言えます。

何よりも大規模地震が起こる可能性が地域限定ではないことを肝に銘じるべきです。